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教育勅語はどのように国会において「排除」されたのか。排除決議を現代語訳してみる

 

柴山文部科学大臣が教育勅語について言及したことで、波紋が広がっている。

mainichi.jp

 

ところで、国会においては教育勅語を「排除」することを正式に決めている。しかしながら、排除と言っても実際に何を指しているのか、多くの人がきちんと理解していないようだ。

下記に、現代語訳した物を掲載する。

 

なお、読める方はきちんと原文を読まれることをおすすめしたい。

衆議院会議録情報 第002回国会 本会議 第67号

 

松本淳造衆院議員による決議案の趣旨説明

第二回国会 本会議 第六十七号 昭和二十三年六月十九日(土曜日)

 

私は、各派共同提案であります教育勅語等排除に関する決議案提出にあたって、その趣旨を弁明します。


永い間、国民の精神を支配していた教育勅語等を排除するのですから、その影響は甚大です。

すでに文教委員会等におきましても数回にわたる会合をおいて慎重に審議しましたが、その結果、本日首題の通り、教育勅諸等を排除するという決議案提出に至りました。

 

なおこの教育勅語等の等でございますが、これは教育勅語に類する、主として教育関係の勅語、詔勅、これらを意味するもので、すなわち陸海軍軍人に対する勅諭(天皇からの諭し)、戊申詔書、青少年学徒に対する勅語(天皇からの言葉)等を指します。この点、あらかじめご了承ください。


まず、主文を朗読いたします。

教育勅語等排除に関する決議文

民主平和国家として世界史的にも建設途上にあるわが国は、その精神において未だ決定的な民主化したとは言えず、大変に遺憾である。

これを徹底にするのに最も重要なことは教育基本法に則り、教育の革新と振興とをはかることにある。

しかるに既に過去の文書となった教育勅語や、陸海軍軍人に対する勅諭、その他の教育に関する諸詔勅(しょうちょく 天皇からの文書)が、今日もなお道徳の指導原理としての性格を持続しているかのごとく誤解されるのは、行政上の措置が不十分であったからである。


思うに、これらの詔勅の根本理念が、主権在君並びに神話的国体観に基づいている事実は、明らかに基本的人権を損い、国際信義に疑点を残す。

よって憲法第九十八條の主旨に従い、衆議院はこれらの詔勅を排除し、その指導原理的性格を認めないことを宣言する。

政府は直ちにこれらの詔勅の謄本を回収し、排除の措置を完了すべきである。


右決議する。


ただいま朗読いたしました主文の通り、現在わが国は平和国家、民主国家としての建設の途上にあります。

ポツダム宣言受諾以來、かつまた新憲法制定以来、確固として決定された国の方針であると言っても間違いはありません。

従って、われわれといたしましては、それを目指して、あらゆる改革を断行し、また断行せんとしています。

ところが、それらの諸改革は、すでに制度上におきましては相当大幅に、画期約に、なされてきましたが、制度上の改革に比べますと、精神的内容についての改革、すなわち、精神革命については、まだ充分とは言えません。

この点は率直に認めてよいでしょう。

すなわち、従来の封権主義的、軍国主義的、超国家主義的な、そういった理念、精神から、個の尊厳を確認しますところの民主主義的な精神の切替え、改革といったものが、まだまだ充分になされていない、世界の水準にも達していないということは、遺憾ではありますが、事実と言わなければなりません。

 

従って、新憲法が制定されても、依然として古い考え方が残っております。新しい考え方と古い考え方がときに衝突し、ときに予盾し、その結果混乱をひき起して、そのために民主化が停滞している、と言っても間違いはありません。

世間でいいますところの道義の頽廃、あるいは虚無的な、理想を欠いた生活展開は、つまりは、この精神の混乱から生れてくる現象であると言っても間違いではありません。


そこで、我々といたしましては、このような混乱をいつまでも放置しておくわけには参りません。できるだけこれらを整理し、民主的な精神内容を国民の一人ひとりが正しく把握し、理想とする平和国家としての体を整え、国際的にも信頼されなければならないのです。

そして、そのことを達成するためには、何よりも教育が本質的に必要で、そのために、教育基本法をすでに制定し、これによって国民の指導原理を明らかにしているわけです。


その基本法においては、われわれは新しい憲法の精神に則り、民主的で文化的な国家を建設して、世界平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示し、個人の尊厳を重んじ、心理と平和を願う人間の育成を期するとともに、普遍的で、個性豊かな文化の創造を目ざす教育を普及徹底しなければならないと規定しているわけです。


ところが、このように明確に規定しているのですが、その規定及びその内容が、国のすみずみまで行き渡っていないのは残念なことです。

そして、その効力を失っている教育勅語、あるいは陸海軍人への勅論、または戊申詔書、青少年学徒への勅語等、これら教育に関する諸詔勅が、未だに国民道徳の指導原理であるかのごとく誤解されている向きもあります。

この点は、民主革命の基本である精神革命の達成には、かなり重要なポイントでして、これをこのまま見逃がしておくことは、決してわが国の現在や将来に、良いことではありません。


ところで、なぜそのような誤解が残っているのか。これが問題になりますが、これは前にも申しました通り、新憲法あるいは教育基本法の精神が、未だ国民の精神内容そのものになっていない結果であることは当然ですが、これらの諸詔勅に対する措置が、法制上または行政上における措置が、今日まで十分に取られていなかったと考えざるを得ません。


といって、その措置が全然なかったわけではありません。たとえば、昭和二十一年三月には儀式の場合に勅語を読め、との項目を削除し、教育は教育勅語の趣旨に則れという項目を削除しました。

 

次いで、昭和二十一年十月八日、その当時の文部省は、次官通牒の形式で、「教育勅語を我が国の教育における唯一の源とせず、式日等に読む慣例をやめる。神格化しない。」と、行政上の措置をとっています。


けれども、その措置がきわめて消極的でして、残念ながら徹底を欠いていますから、本当に勅語を廃止したのか、失効したものとして認めているのか、自然に消滅すればいいと思っているのか、いずれにせよ、徹底的な措置がなされているとは言いがたい点があります。

従って、今もなお教育勅語の謄本は、各学校に保管させて、そのままにしているような状態です。だから国民も、はたして勅語が失効したのか、効力をもっているのか、生きているのか、判断できませんから、そこにいろいろな誤解が生れてくるわけです。


これらを考える場合、われわれは、その教育勅語の内容におきましては、部分的には真理性を認めるのです

それを教育勅語の枠から切り離して考えるときには真理性を認めるのですが、勅語という枠の中にある以上は、その勅語そのものが持つところの根本原理を、我々としては現在認めることができません

それが憲法第九十八条にも沿いませんので、この際この条文に反する点を認めて、教育勅語を廃止する必要があると考えざるを得ません。

 

これは単に国内的の視野においてだけではなく、国際的の視野においても、特に明らかにしておくことが必要です。

本日衆議院は、院議によってこれらの諸詔勅を排除し、その指導原理的性格を認めないことを宣言し、政府によって直ちにこれら詔勅の謄本を回収し、はっきりと排除の措置を完了したいと思います。
以上、簡単ですが、教育勅語等排除に関する決議案上程に際し、その趣旨を弁明しました。諸般の事情を考え、賛成いただきたいと思います。(拍手)

 

決議案と趣旨説明についての解説

ここのところで重要なのは二点になる。

詔勅の根本理念が、主権在君並びに神話的国体観に基づいている事実は、明らかに基本的人権を損い、国際信義に疑点を残す。

 という決議と、

われわれは、その教育勅語の内容におきましては、部分的には真理性を認めるのです。

それを教育勅語の枠から切り離して考えるときには真理性を認めるのですが、勅語という枠の中にある以上は、その勅語そのものが持つところの根本原理を、我々としては現在認めることができません。

 という点だ。

 

つまり、「切り離して考えたときには一部いいことも書いてあるかもしれないが、それが根本的に主権在君に基づいている以上、根本原理を認めることが出来ない」ということが言える。

この、前半の「切り離して考えたときには一部いいことも書いてある」という点をまさに切り離して考えているのが柴山文部科学大臣だろう。

全体としてこの決議が、「主権在君」と「教育勅語」が不可分であり、そのために教育勅語を排除するべきである、ということを言っていることは否定しがたい事実であるといえる。

「アベ政治を許さない」に感じる違和感

www.asahi.com

金子兜太さんが書かれた「アベ政治を許さない」という文字は、様々なところで用いられ、未だに政治的なプロテストの場ではよく使われている。

その成立の経緯については充分に理解しているし、敬意を払いたい。

 

 

しかし、私は、「アベ政治を許さない」という言葉、あるいはそれを用いた政治的なパフォーマンスには、ずっと違和感を覚えている。

安保法制強行採決のあとから、度々駅に「スタンディング」という形で無言でボードを持っている人がいたが、率直にいえば、黙ってそのボードを持っている人を見ると、怖い、とすら思う。

先日、私のつぶやいた内容を巡って様々なご意見をいただき、改めてなぜ「アベ政治を許さない」というボード、あるいはメッセージに対して違和感を感じるのかを考えた。

 

そこにあるのはむき出しの怒りだけ

もちろん、このブログを見ていただいている人ならおわかりの通り、私は安倍政権の国会運営や憲法を軽視する姿勢に大して大きな疑問を抱いている。

しかし、そのような前提をおいてもなお、この「アベ政治を許さない」というボードを見た時に感じる感情は、決して快いものではない。

 

問題は、「アベ政治を許さない」というボードを見るだけでは、「なぜ許さないのか」という理由がさっぱり伝わってこないことにある。

 

例えば、「アフリカの子供に学校を」というスローガンは、「アフリカの子供たちの識字率は○%で、それによって失業率は○%となっています」というような説明があって初めて、「なるほど、それは確かに学校が必要だな」と納得することができる。

しかし、単に「私は怒っている」と伝えられるだけでは、そこにはもやもやした違和感が残るだけだ。

 

私は国会をよく見るので、彼らがは何に怒っているのかは分かる。

しかし、ほとんどの人は理由もなく怒っている、もっというとイチャモンをつけているように見えるだろう。

 

つまり、「アベ政治を許さない」というのは、ものすごくハイコンテキストなコミュニケーションなのだ。

つまるところそれは、同じ文脈を共有しているものにしか通じないコミュニケーションであり、ほとんどある種の符号や隠語としてしか機能していない。

 

もちろん、おかしいこと、間違ったことは何年経とうと間違っているし、安保法制を巡る過程は極めて問題の多いものだった。

しかし、人間の記憶は薄れてしまうものだ。理由を説明しなければ「ただよくわからない理由で怒っている人」という扱い方をされてしまうだろう。

 

「保守の文脈から語れるリベラル」の不在

安倍総理という人はまともに議論もできないわ、身内は贔屓するわ、宰相としてのろくでもなさは群を抜いているが、少なくとも、自分に何が求められているかを察知する能力には長けている。

 

安倍総理は、自分がリベラルであると心から信じ込んで話すことが出来る。例えば、少子化対策や、男女共同参画など(成果を上げているかは別にして)、自らと異なる立場の人間に対して響くような政策を語ることができる。

それは、安倍総理のコミュニケーターとしての強みである。自民党は田中角栄以来、そのようにして野党の支持層を切り崩してきた。

 

翻って、「保守の文脈から語れるリベラル」が必要とも言える。

立憲民主党の枝野代表は度々自らを保守と語っている。このように「異なる立場においても語れる」ことが、ますます求められてくるのではないだろうか。

 

 

自らを保守と規定する人たちに対して、丁寧に安倍総理の問題点を説明していくことこそ、政治活動であり、政治的なパフォーマンスとして有効足り得るのではないか、と私は思うし、その意味で「アベ政治を許さない」は、果たして有効なのか疑問が残る。

 

新しい政治的コミュニケーションのあり方を

「アベ政治を許さない」は、安保法制の強行採決という時代において発生したコミュニケーションでだ。

しかし、3年が経ち、多くの人の記憶から安保法制の記憶が薄れてしまった今、そこから汲み取れるのは「彼らは怒っているのだ」という点だけだ。

 

もちろん、これらは、クローズドなコミュニティにおいては一定程度効果があるのかもしれない。しかしながら、全くそれらの事情を斟酌しない他者に対しては、効果的なパフォーマンスとは言えないだろう。

 

私が代案として提案していきたいものがある。それは「8時間働けばまともに暮らせる社会へ」だ。

 

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これは、参院の神奈川選挙区に出馬されていたあさか由香候補のスローガンだったと思うのだが、日本共産党さん全体で使われているようだ。

これはとにかくわかりやすいし、誰もが共感できるスローガンだし、どの野党も使えばいいんじゃないかと思う。著作権とかの問題があるのかはよくわからないけど。

でも、別にどの産別でもこれに反対する理由はないはずだ。

 

union.fem.jp

 

また、度々ご紹介している法政大学上西教授による「国会パブリックビューイング」も素晴らしい試みだと思う。

 

我々は、ハイコンテクストなコミュニケーションに逃げることがなく、なぜおかしいと思うのか、なぜ間違っているのかと思うのかを説明し続けなくてはいけない。

だからこそ、国会で何が起こっているかをメディアが伝えなくてはいけないし、メディアが伝えないなら、国会を見ている奇特な人が筆を執るべきだと思う。

 

そういうわけで、私も国会開会中には、国会で何が起こっているかについて記事を書いたりしているわけだ。

「アベ政治を許さない」はイデオロギーかもしれないが、公文書改ざんはファクトである。そして、国家にとって重要なファクトを伝えることには、右も左もない。

 

そして、結局の所、そういったファクトを伝え続けることでしか、この国に正常な民主主義は戻らない、と考えている。

西日本新聞にはデータリテラシーがなかったのか?

なんとなく気になったので。

 

この西日本新聞の記事に対して、 

 

上記のような批判があった。

 

筆者の主張

ざっくり筆者の主張をまとめると、

  • そもそも毎月勤労統計は不正確な指標である
  • サンプリング手法の変更は、よりデータを正確にするために行ったのだから問題ない
  • 西日本新聞にはデータリテラシーがない

というあたりになるだろうか。本当にざっくりなのでくわしくはリンク先を読んでほしい。

 

データの上振れについて

 厚労省によると、作成手法の見直しは調査の精度向上などを目的に実施した。調査対象の入れ替えは無作為に抽出している。見直しの影響で増加率が0・8ポイント程度上振れしたと分析するが、参考値を公表していることなどを理由に「補正や手法見直しは考えていない」(担当者)としている。

西日本新聞の記事にはこうある。

政府自身が上振れしていることは認めているし、ローテーションサンプリングへの変更による影響は下記の資料にも明記されている。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/maikin-rotation-sampling.pdf

 

毎月勤労統計とはなにか

そもそもデータというのは、

  1. 正確であるかどうか?
  2. 継続的に同じ基準で取られているか?  

の二つが重要だ。

 

さて、毎月勤労統計のページを見ると、調査の目的についてこのように書かれている。

毎月勤労統計調査は、雇用、給与及び労働時間について、全国調査にあってはその全国的の変動を毎月明らかにすることを、地方調査にあってはその都道府県別の変動を毎月明らかにすることを目的とした調査です。

つまり「変動を毎月明らかにすること」が目的だ。景気動向や政策の効果を検証するためには、上がったか下がったかが重要だろう。

多少のブレがあるにせよ、一貫した基準で取られていることが重要なタイプのデータであることが分かる。

 

ちなみに、賃金構造基本統計調査(いわゆる賃金センサス)との違いについても、このように書かれている。

 賃金構造基本統計調査は、賃金構造の実態を詳細に把握するための調査です。労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数、経験年数等の属性別に賃金等を明らかにします。毎年6月分の賃金(賞与については前年1年間)について同年7月に調査を実施し、その結果については、翌年2月に公表しています。

 毎月勤労統計調査は、賃金、労働時間及び雇用の毎月の変動を把握するための調査です。産業別、就業形態別の賃金等を毎月明らかにします。調査の結果については、翌々月上旬に速報、その半月後に確報として公表しています。

 

何が問題なのか?

問題は、異なる基準で取られた(上振れしている)データが、同じデータセットの中に収集され、時系列で比較されてしまうことにある。

変動を把握するための調査で、基準が変わってしまえば、その期間の政策の効果検証や景気の動向の確認ができなくなるということだ。

厚労省はサンプリング手法を変えながら、参考値を公表しているが、この参考値はサンプリング対象から外した標本だけを対象にした値なので、過去の数字と比較して並べることは出来ない。

 

先のnote の筆者は

平成30年以前は、むしろ公表値より共通事業所の方が高かったわけで、標本になんらかのバイアスがかかって、改訂前の標本はもともとちょっと低かった可能性もあるわけです。

と述べている。

 

しかし、バイアスがかかっていたなら、過去のデータのバイアスを補正した上で比較しなくては、知見は得られない。

 

過去のデータのほうが仮に間違っていたとしても、その間違った基準のデータと現在の正しいデータを突き合わせて比較すれば、実際の賃金の伸びよりも遥かに上振れした数値が出てしまう可能性があるのだ。

これは、時系列で比較するタイプのデータとしては致命的だ。Apple to Apple ではない。

 

総論

西日本新聞にデータリテラシーがないとは言えない。というか、少なくともちゃんと取材して「上振れしているが補正するつもりはない」と答えているんだからかなりちゃんとした取材であろう。

 

少なくとも過去の一定期間(過去一年とかでも)のデータに関しては、現状のデータと同じ基準で比較できるよう補正した上で公表する必要があるのではないだろうか。

あと、例えば参考値ではなく、一定期間は「旧基準での推定値」みたいなものを出すとか。

 

それが出来ないのであれば、政府は毎月勤労統計の発表に際して、「基準が変わっているから一定程度上振れしている(これは厚労省も認めている)」ことを丁寧に説明する必要があると思う。

厚生労働省のサンプリング手法変更に問題があるとは思わないが、上振れした数値を、まるで自らの政権の実績であるかのように喧伝することがないようにしてほしい。

「ある意味犯罪」「週休七日が幸せか」「いい加減にしろ」 ― 与野党政治家の発言から振り返る、第196回(2018年)国会の異様さ

196回国会が閉幕した。異質で異様だった前国会について、本記事では時系列を追ってまとめた。

※国会の議事録の性質上、全発言を引用するととても助長になるため、一部抜粋しているものがあるが、大意は変わっていない。

 

ハーバー・ビジネス・オンラインにもほぼ同内容で掲載していただいた。細かい点で見やすくなっているのでご一読いただければ。hbol.jp

hbol.jp

 

 

【1月〜4月】森友と加計と文書改ざんの春

野党の時間配分削減問題  

八年間続いた慣例が破られたということで、そんなに野党の質問が嫌なのかなというふうにも思わざるを得ないんですけれども

長妻昭 政調会長(立憲民主党)

 

国会でお決めになることだろう、このように思います。

安倍晋三 総理大臣(自由民主党)

1月29日 衆議院予算委員会

 

国会の冒頭、最も話題になったのは、与野党の質問時間の配分に関する問題だった。

慣例的に野党に多めに配分されていた質問時間を、石崎徹衆院議員を中心とした自民党の若手議員が中心となり、質問の機会を増やすことを要望した、ということらしい。

www.sankei.com

 

昨年は「プレミアムフライデーの感想」「婚活イベントに行った感想」などを閣僚に尋ねるなど大変意義深い質疑をされていた石崎議員。

TOKYO縁結日二〇一七というイベントが開催されました。(中略)約三千人の方が訪れたということで、大盛況であったというふうに聞いております。

こうしたところに加藤大臣みずから出られて、その御感想なりをお伺いしたいと思います。

平成29年3月15日 衆議院内閣委員会 

実際、大臣も働き方大臣ということで、プレミアムフライデー、百貨店に行かれたということでございますが、このあたり、御感想を少しお伺いできればと思います。

平成29年3月15日 衆議院内閣委員会

今国会では一度しか質問の機会がなかったようだが、与党の質問時間が半分あれば、石崎議員の質問の場も増え、もっといろいろな感想を閣僚から引き出せたかもしれないと思うと、実に残念だ。

ともあれ、このような「野党の質問を嫌がる」総理、あるいは自民党の姿勢は、今国会を通じて一貫していたと言える。

 

ちなみに、この交渉の舞台裏については、辻元国対委員長が当時を振り返り、このように述べている。

 森山委員長も私も電卓を持って、自民党国対の部屋で向かい合うわけですよ。そして、アイスクリームを食べながら、電卓をバチバチ叩いて、「これでどうだ!」、「これでどうだ!」と数字を見せ合う。

そのうち、自民党が「与党5対野党5」と言っていたのが、「1対2」になって、「3対7」になって、最終的には慣例通りの「2対8」に戻して……。

 

国税長官の証人喚問を巡る駆け引き

さて、冒頭国会の一つの焦点は、国税庁長官に昇進した佐川氏が証人喚問されるのか?という点に関する駆け引きだった。

総理は、適材適所だと佐川長官のことをおっしゃいました。適所にいる適材であれば、しっかりとこの場に出て話すことは可能なはずです。なぜ隠すんですか。

西村智奈美 衆院議員(立憲民主党) 

2月2日 衆議院予算委員会

このとき、まだ政府は佐川氏を適材適所と述べており、また佐川長官は慣例となっている就任時の記者会見も行わないという異様な状態だった。

 

茂木敏充経産大臣の線香配布問題

政党支部の活動だから問題がないとか、名前が書いてないから問題がないとか、そういうことではなくて、そもそも法の趣旨として、物を配って政治活動をしてはいけないんだということなんです。

 

青柳陽一郎 衆院議員(立憲民主党) 

2月5日 衆議院予算委員会

森友・加計以外に注目されたスキャンダルの一つに、茂木経産大臣の線香配布問題があった。同じような事案で議員辞職をした小野寺大臣が答弁を求められ、困惑した様子を見せていた。 

 

相次ぐ沖縄での米軍の不祥事に対する対応

前国会に引き続き、江崎鉄磨沖縄北方担当大臣の失言問題も問題になった。

江崎大臣は健康問題で退任し、公認に福井照議員が就任するものの、色丹島を「しゃこたん」と誤読するなど、沖縄北方大臣としての見識を疑われる事態が相次いだ。

 

また、米軍機の墜落に合わせ、松本文明内閣府大臣が発言した内容が問題となり、副大臣を事実上更迭された。 

それ(米軍機事故)で何人死んだんだ

松本文明内閣府副大臣(自由民主党)

1月26日 衆議院本会議 沖縄県で相次いだ米軍機事故をめぐって共産党の志位氏に野次

個人的には、この暴言は議員辞職級であると思うが、まあ、これで辞めていたら、今国会はずいぶん欠員が出てしまうだろう。

 

公開ヒアリングとその批判

全面テレビ公開で、公開リンチのよう

牧原秀樹 厚生労働副大臣(自由民主党)

3月1日 自民党部会にて

こう述べた牧原氏は後に発言を撤回したが、今国会において、最も注目されたポイントの一つは、野党が行う野党合同・公開ヒアリングだろう。

もともとヒアリング自体は与野党問わず行っており、野党側はマスコミフルオープンで行っていることも多かったが、加計学園問題や森友学園問題(にまつわる財務省の不正)という、国民・マスコミからの関心も高く、注目された。

野党合同ヒアリングの中で、チェックマークのある資料とない資料の存在が明らかになるなど、一定の成果があったと言えるだろう。 
www.asahi.com

 

渡邉美樹氏の問題発言

働き方改革問題では、渡邉美樹参院議員の発言も問題となった。

渡邉議員は、過労死遺族を前にこう述べた。

お話を聞いていると、週休七日が人間にとって幸せなのかと聞こえる

渡邉美樹 参議院議員(自由民主党)

3月13日 参議院予算委員会公聴会 過労死遺族に対して 

私個人の感想としては、過労死遺族の公聴会で渡邉氏を質問に立たせるほうがどうかしていると思う。 

 

政府、裁量労働制の対象拡大を撤回へ

実態を反映したものとは確認できなかった

加藤勝信 厚生労働大臣(自由民主党)

3月23日 厚生労働委員会

今国会の目玉法案の一つである裁量労働制の拡大を撤回したことは、与党にとっては大きな痛手となった。

裁量労働制の立法事実に関わるデータに致命的な不備が見つかり、撤回に追い込まれたのだ。

しかしながら、高度プロフェッショナル制度を盛り込んだ働き方改革法案は、似たようなデータの不備にも関わらず、後に法案が提出されることになる。

 

財務省による改ざんが明らかに

さて、公開ヒアリングでのらりくらりと交わし続ける中、朝日新聞がスクープを出した。森友学園関連文書の改ざん(書き換え)疑惑である。

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当時は(これが本当であれば)内閣総辞職は当然として、財務省解体まで視野に入るのではないか、と思われた大スキャンダルだった。

 

一方、財務省トップである麻生財務大臣や、官邸の対応は、異様なほど鈍かった。

どの組織だって改ざんはありえる話だ。会社だってどこだって、ああいうことをやろうと思えば個人の問題でしょうから

麻生太郎財務大臣(自由民主党)

5月8日 記者団に対して

少し言葉を書き換えた程度の話だ。大したことはない

首相官邸幹部

毎日新聞の報道による 

また、一部議院が報道の信憑性に疑問を投げかけていたことも記憶に新しい。

いずれにせよ、本件についての信憑性は後に明らかになることになる。

安倍総理は11日に知ったと答弁していたものの、後に5日の段階で把握していたことが明らかになっている。

www.asahi.com

これにより、「適材適所」と称していた佐川国税庁長官は辞任。

麻生財務大臣は本人から辞意の申し出があった、あくまで適材適所としながらも、減給処分を発表した。

佐川氏、証人喚問へ

佐川氏は、財務省を辞した後に証人喚問されることになる。

証人喚問は、結果的には「刑事訴追のおそれがある」ことを理由に、野党の質問の殆どを拒否する結果となった。

丁寧さに欠いたどころか、決裁文書に書いてあることとも正反対のことをこの場で答えたんですよね。何でそんなことされたんですか。

小池晃 書記局長(日本共産党)

 

あの、やはりその件は、私自身がその書換えのその経緯、いつ書き換えたかとかそういうことを、まさに時期に関わるその話でございますので、そこはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

佐川宣寿 証人

 

これでは証人喚問の意味がありません。これも拒否するんだったら、これ以上聞いたって意味ないじゃないですか。
私は改ざんについて聞いているんじゃないですよ。実際に国会の答弁をどういう根拠でやったか聞いたんですよ。これ、これで進めるわけにいきません。

小池晃 書記局長(日本共産党)

3月27日 参議院予算委員会

一方、「総理の影響も総理夫人の影響もなかった」ことだけははっきりと答え、自民党議員も「関与はなかった」と高らかに宣言した。

佐川氏がいったい何を目的としてこの場に立ったのは、多くの人には明らかであっただろう。

私が昨年勉強して、ずっと一連の書類を読んで国会で答弁をさせていただいた中でいえば、総理も総理夫人の影響もございませんでした。

佐川宣寿 証人

  

少なくとも、今回の書換え、そして森友学園の国有地の貸付け並びに売払いの取引について、総理、総理夫人、官邸の関与はなかったということは証言を得られました。ありがとうございました。

丸川珠代 参院議員(自由民主党)

3月27日 参議院予算委員会

 

予算委員会集中審議

改ざん、首相案件と多くの問題が明らかになる中、四月に入り、野党は、森友・加計問題で政府を追求する。まずは川内博史議員と大田理財局長だが、そこで飛び出したのは驚愕の答弁だった。

安倍昭恵総理夫人の名前が三カ所記載されていることを中村課長は十分に知っていたということでよろしいでしょうか。

川内博史 衆院議員(立憲民主党)

 

中村理財局総務課長に確認したところ、それは責任はありますが、正直に言うと、その時点においてそこまでちゃんと見ていなかったので、それは覚えていませんでしたというのが彼の正直な発言でございます。

大田理財局長(財務省)

4月11日 衆議院予算委員会 集中審議

その後、枝野幸男立憲民主党代表が麻生大臣に問いただすと、大臣からはこのような答弁が帰ってきた。

判こを押した当人が、決裁文書を読んでいませんでしたと公然とおっしゃる。役所として、たがが外れ過ぎじゃないですか。

枝野幸男 代表(立憲民主党)

 

ずうっと判こを押したやつの中を全部私ども読んでおるかと言われると、私自身も、正直、読んでいない書類に関していろいろ決裁の判こを押していることはありますから

麻生太郎 財務大臣(自由民主党)

4月11日 衆議院予算委員会 集中審議

財務省のガバナンスは一体どうなっているのか、と疑問を抱かざるをえない。

 

愛媛文書と「首相案件」

さて、森友文書問題で国会が揺れる中、新たな問題が明らかになる(あらゆるところで火が付けばどこが火元かわからなくなるが)。

加計学園問題をめぐり、「本件は首相案件」と総理秘書官が発言していたのではないか?という問題だ。

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柳瀬総理秘書官は、当初このように「記憶がない」とコメントしていた。

国会でも答弁していますとおり、当時私は、総理秘書官として、日々多くの方々にお会いしていましたが、自分の記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません。

柳瀬唯夫 審議官(経済産業省)

「記憶の限り…」加計学園問題 柳瀬氏コメント全文 | 注目の発言集 | NHK政治マガジン

この問題に関しては、加計学園への便宜供与という問題が取り上げられたのと同時に、総理秘書官という重職にある人間の行動が記録されていないということがありうるのだろうか?という点も問題となった。

集中質疑でも当然議題に登るものの、総理は「コメントする立場にない」などと意味不明の答弁を繰り返した。

愛媛県の担当者が聞いてもいないことを書いたんですか。そうでなかったとすれば、柳瀬さんがうそをついているか、どっちかしかないんですよ。違いますか、総理。

枝野幸男 代表(立憲民主党) 

 

先ほど申し上げましたように、愛媛県が作成した文書の評価について、国としてコメントする立場にはないわけでございます。
安倍晋三 総理大臣(自由民主党)

 

論理的に、柳瀬さんがうそをついているか、愛媛県の担当者が聞いてもいないことを勝手に書いたか、二つに一つじゃないですかと聞いているんです。

枝野幸男 代表

 

今お答えをしたように、愛媛県が作成した文書の評価について、国としてコメントすることはできないわけであります。
他方、私は部下を信頼して仕事をしているところでございまして、総理秘書官在任中もそうでありましたが、柳瀬秘書官の発言を私は信頼しているところでございます。

安倍晋三 総理大臣(自由民主党)

 

4月11日 衆議院予算委員会 集中審議

「コメントする立場にない」という言葉が何を指しているのかは理解できないが、いずれにせよ総理はこれについて答弁したくないのだ、ということだけは理解できる。 

 

財務事務次官のセクハラ問題

このように、省庁のガバナンスや政府の嘘が問題となる中、明らかになったのが、当時の財務省事務次官のセクハラ問題だった。

発言自体の問題もさておき、任命権者たる麻生財務大臣の発言は、セクハラを容認していると取られかねない発言だった。 

一方的な訴え、取扱いのしようがないです。状況が分かるよう音声の声の人が出てこなきゃならないでしょ。本人が申し出てこなけりゃどうしようもないですね。

麻生太郎副総理 財務大臣(自由民主党)

「本人が申し出て」財務省の対応に批判の声…福田事務次官“セクハラ疑惑” - FNN.jpプライムオンライン

また、下村元文部科学大臣が「ある意味犯罪」などとテレビ局の記者を批判したことも波紋を呼んだ。

テレビ局の人が、隠してとっておいて週刊誌に売ること自体がはめられていますよ。ある意味で犯罪だと思う

下村博文 元文部科学大臣

 4月22日 講演にて

また、セクハラ問題へのパフォーマンスとして黒い服を着た野党議員を「セクハラとは縁遠い方々」などと述べた長尾たかし衆院議員(自由民主党)は、後に発言を撤回したことも記しておく。

福田氏は後に辞任を表明し、佐川氏と並び、財務省のトップ二人が不在という異常な事態に陥った。 

 

野党、審議拒否へ

このような異常な状態の中、野党は審議拒否に踏切り、「四項目」を審議復帰の条件として上げる。 

財務省の福田淳一事務次官のセクハラ疑惑や同省による決裁文書改ざん問題を踏まえた麻生氏の辞任

森友・加計学園問題に関連する柳瀬唯夫・元首相秘書官らの証人喚問

財務省の改ざん問題に関する調査結果の4月中の公表

イラクに派遣した自衛隊の日報問題の真相究明――の4項目

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国会は二週間以上も空転し、妥協点が見えない中、最終的には柳瀬氏の参考人招致を条件に、審議に復帰することになる。

話し合いに応じようと思う。議長の要望に応えられるように、どこまで歩み寄りができるのかというのがこれからの段階だ

辻元清美 国対委員長(立憲民主党)

審議拒否は野党にもダメージを与え、与党議院からの批判も相次いだ。

また、この間に「希望の党」と「民進党」が合併するなど、野党間の枠組みにも変化があった。

 

審議復帰と柳瀬氏の招致

参考人招致に応じた柳瀬氏は、記憶にない、と語っていた前回の招致からは一転し、加計学園関係者との接触を認めた。

一方、面会は特別なものではなかったし、国家戦略特区関係ではなかったことも強調した。

総理秘書官は総理大臣と一心同体ですよ。しかも、将来の許認可の対象事業者、補助金の対象事業者でもある方とあなたが会うと、それは総理に累が及ぶんですよ。

では、お聞きしますけれども、あなたが総理秘書官として民間の、外部の方に会う会わないの基準は何ですか。

江田憲司 衆院議員(無所属の会)

 

よっぽど反社会的勢力であるとかそういうことを別にすれば、できるだけアポイントの申入れがあればお会いするようにしてございました。

柳瀬唯夫 審議官(経済産業省)

また、重要なポイントとして、総理秘書官であった柳瀬氏が、総理の親友が理事長を務める加計学園の関係者と面会しながら、それについて一言たりとも総理に報告しなかった、と証言したことがあげられる。

ランチとかそういう日々の、夕方の日程調整、総理を囲む場でもあなたは一切この話を雑談でもしなかったんですか、安倍総理に。おかしいじゃないですか。

江田憲司 衆院議員(無所属の会)

 

一切お話ししたことはございません。

柳瀬唯夫 審議官(経済産業省)

 

私に言わせれば、それはあなたが口にばんそうこうでもしていない限り、絶対それは言うんですよ。

江田憲司 衆院議員(無所属の会)

このようなやり取りを通じ、むしろ総理と加計学園の深い関係が明らかになってきたといえるだろう。 

このあと、加計学園問題に対して、総理は「コメントする立場にない」「一転の曇りもない」などのフレーズを使いまわしながら、コミュニケーションを徹底して拒否する戦術に出た。 

いずれにせよ、五月までに加計学園問題のほとんどの真相は明らかになったと言えるだろう。

総理秘書官が加計学園関係者に面会していたことが明らかになったのだから。

 

【5月〜6月】高度プロフェッショナル制度と党首討論の初夏

党首討論の歴史的価値

五月の終わり、約一年半ぶりとなる党首討論が開かれた。

全党首を合わせても45分という極めて短い時間ではあり、また、野党第一党である枝野幸男代表は、森友問題や加計問題について問いただしたものの、安倍総理は枝野氏よりも長く答弁するなど、討論は噛み合わなかった。

 

例えば、

内閣総理大臣の名前を勝手に使われて、物事をうまく運ぼうとしていた加計学園に対しては、どうなっているんだ、これはしっかりと、具体的なことをしっかり説明してもらわなきゃ困ると総理大臣としては言わなきゃおかしいじゃないですか

枝野幸男 代表(立憲民主党)

という枝野氏の質問に対して、安倍総理は下記のように述べている。

 

(長いのでスクリーンショットにする)

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枝野氏は、討論終了後このように述べた。

意味のないことをだらだらとしゃべる総理を相手に、今の党首討論という制度の歴史的意味は終えたことが今日の討論を通じてはっきりした

枝野幸男 立憲民主党代表

5月30日 党首討論後のぶら下がり記者会見にて

 

穴見陽一議員の信じがたい野次

この時期、信じがたい野次があったことも、ご記憶の方がいるだろうか。

いい加減にしろ

そんなキレイ事ばかり言うならたばこを禁止にしろ

穴見陽一衆院議員(自由民主党)

6月15日 衆議院厚生労働委員会 肺がん患者に対して

いやしくも国会に「お越しいただいている」はずの参考人にこのような暴言を吐くのは、人間としての品性が下劣であるばかりか、議会への侮辱にほかならない。

 

自民党の家族観

また、この時期は自民党が持つ家族観や人権意識にもスポットライトがあたった。

加藤衆議院議員は、地元の結婚式の来賓として下記のように述べたことが問題視された。

新郎新婦は必ず3人以上の子供を産んでほしい

加藤寛治 衆院議員(自由民主党)

5月10日 結婚式の祝辞にて

その発言の後、党幹部の二階幹事長も、子供を産むことは義務であるかのような発言を行った。

この頃、子供を産まない方が幸せじゃないかと勝手なことを考える人がいる

食べるのに困るような家はないんですよ。実際は。

二階俊博 幹事長(自由民主党)

6月26日 講演後の質疑にて

また、杉田水脈議員の寄稿も話題となったことも記憶に新しい。

(LGBTは)子供を作らない、つまり『生産性』がない

杉田水脈 衆院議員(自由民主党)

「新潮45」2018年8月号

一人の発言ならともかく、これらの発言を総合すると、自由民主党という政党がいかなる思想を共有しているのか、見えてくるのではないだろうか。

 

高度プロフェッショナル制度を巡る攻防

後半国会で大きな争点となったのは、高度プロフェッショナル制度だ。

裁量労働制の拡大はデータの不備で撤回されたにも関わらず、高度プロフェッショナル制度に関しては、どのようなデータの不備があろうとも、頑なに今国会で成立させる姿勢を示した。

当初、労働者からのニーズが有るとされていたものの、

ニーズということであればですね、私どものほう、これ、あの、実際、いくつかの企業と、あるいは、そこで働く方からですね、いろんなお話を聞かせていただいているということであります。

加藤勝信 厚生労働大臣(自由民主党)

5月9日 衆議院厚生労働委員会

結果的には、ヒアリングはわずか12名を対象に行われただけだった、ということが発覚した。

news.yahoo.co.jp

後に、安倍総理は労働者のニーズではなく、産業競争力会議で意見があったものだと述べている。

高度プロフェッショナル制度はですね、産業競争力会議で、経済人や学識経験者から制度創設の意見があり、日本再興戦略において、とりまとめられたもの。

安倍晋三 総理大臣(自由民主党)

6月25日 参議院予算委員会

いずれにせよ、なぜここまで強硬に採決を急いだのか、という理由は明白だろう。

また、この間「ご飯論法」と言われる、加藤厚労大臣の質問に答えない姿勢も話題を読んだ。

 

怒号の中の採決

高度プロフェッショナル制度の採決における異様さの一つに、立法事実たるデータがほとんどデータの体をなしていなかったということがあげられる。

衆議院の委員会採決の朝にも新しいデータが提出されるという有様だった。

これは、私のきょうの資料の二ページ目と三ページ目につけました。この資料自体、きょう出てきた数字によって、新たに午前中出されたこの数字によって変わったんですよね。

岡本充功 衆院議員(国民民主党) 

当日朝に修正した資料への対応に右往左往する始末で、挙句の果てに、修正したデータの誤りを指摘されている最中に委員長が討論を打ち切るという暴挙に出た。 

三十分近く延びているのに何で合計が変わらないのか、ここ、ちゃんと説明してくださいよ。一番上が変わらない理屈がわからない。ちゃんと説明してください、政務官。

岡本充功 衆院議員(国民民主党)

 

既に持ち時間が終了いたしております。加藤厚生労働大臣。

高鳥修一 厚生労働委員長(自由民主党)

 

じゃ、最後、簡単に申し上げますが、今政務官から申し上げた四つの数字ですね、全体から見た下の四つの数字が違っていると。
私たちが出したデータで、要するに、ふえているものと減っているものがあるわけですから、平均が同じになっても別におかしくないということであります。

加藤勝信 厚生労働大臣(自由民主党)

 

数が変わっているんですよ。何事業所調べたかという数が変わったんでしょう、サンプルが。

岡本充功 衆院議員(国民民主党)

 

既に質疑時間が経過をいたしております。岡本充功君の質疑はこれで終了いたしました。以上で内閣提出法案及び修正案の質疑を終局することに賛成の諸君の起立を求めます。

高鳥修一 厚生労働委員長(自由民主党)

この経緯は過去に記事でまとめている。

www.yomu-kokkai.com

 

高度プロフェッショナル制度事態の問題点は、様々に指摘されているとおりだが、それ以上に法案成立に至る過程は、およそ近代国家とは思えないものだったことを指摘しておきたい。

 

罰則付き、残業時間の上限規制

罰則付の時間外労働の上限規制や中小企業における60時間超の時間外労働の割増賃金率に対する猶予措置の撤廃、雇用形態間における不合理な格差の解消に向けた同一労働同一賃金の法整備など、連合が求めてきた事項が実現する点は評価できる。

連合 逢見事務局長

働き方改革関連法案の可決・成立に対する談話 | 連合ダイジェスト

働き方改革法案として可決した「残業時間の上限規制」に関しては画期的であり、三六協定に対しても規制をかけるものだ。

また、同一労働同一賃金に関しても、評価する声は大きい。

あまりにも高度プロフェッショナル制度の立法過程がずさんであり、このような画期的な規制が充分に取り上げられることがなかったのは、残念なことだと思う。

 

財務省の報告により、総理発言の影響力が明らかに

また、この時期森友学園問題に対しても進展があった。財務省から改ざんの報告がなされ、「私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」という総理の発言以降に改ざんがなされたことが明らかとなった。

www.huffingtonpost.jp

普通の思考回路では、この発言がきっかけとなったと解釈されるだろうが、自由民主党という政党ではどうもそうでもないらしく、下記のような発言をした柴山氏は後に訂正する羽目になった。

(改ざんは)国会における総理の答弁が少なくともきっかけになったことは紛れもない事実

 

柴山昌彦 筆頭副幹事長(自由民主党)

自民・柴山氏の「改ざんは総理答弁きっかけ」→発言撤回:朝日新聞デジタル

「裸の王様」とは実によくできた寓話なのだと現代になっても感心させられる。

【7月〜8月】カジノと災害対応と不信任案の夏

総理の本音

この時期になると、総理の弱気な発言も度々メディアに取り上げられた。

もう集中審議は勘弁してほしい

安倍晋三 総理大臣(自由民主党)

首相「もう集中審議は勘弁してほしい」言及 ステーキ店で:朝日新聞デジタル

「総理はこう言っていたよ」と記者団に語った河村建夫衆議院予算委員長は、後に「そういう発言はなかった」と撤回する羽目になった。

官房長官まで努めた党の重鎮であるにもかかわらず、事実を言っただけで訂正させられる委員長も大変である。

 

豪雨と「赤坂自民亭」

地元秘書から、地元明石淡路の雨は、山を越えたとの報告を受けました。秘書、秘書官と随時連絡を取り合いながらの会でした

西村康稔 官房副長官(自由民主党)

Twitter(現在は削除)

6月末から7月にかけ、中国地方を豪雨が襲った。これらの災害対応も批判を浴びることになる。

すでに気象庁が未曾有の事態であることを会見で述べていたのもかかわらず、安倍総理をはじめ多くの議員が、自民党の会合で酒宴をしていたことが問題となった。

 

また、国防で重責を担う官房副長官が「山を越えた」などというツイートをしたことも問題となった。

山を超えるどころか、その後も豪雨は拡大し、多数の死者を出す平成最悪の豪雨災害となった。 

安倍政権の「危機管理能力」とはなんだったのだろうか?

 

二度目の党首討論

二度目の党首討論では、前回ほとんど質問への回答がなかった枝野代表が安倍総理との討論を諦めて長演説に走るなど、 終始「討論」と呼ぶ雰囲気にはならなかった。

その中でも真摯に質問をした議員もいる。短い時間ではあるが、岡田克也無所属の会代表はこう問うた。

総理、良心の呵責を感じませんか

岡田克也 代表(無所属の会)

安倍総理は、委員長から「時間が来ております」と何度も注意される中、長々と答弁して岡田氏の時間を浪費し、最後に質問しようとした岡田代表に対してこう言い放った。

やっぱり岡田さん、ルール守んなきゃ

安倍晋三 総理大臣(自由民主党)

この国の総理がいかなる人間なのかということが明確になった、という意味では、意味のある党首討論であったと言えるのかもしれない。

 

カジノ法案の成立へ 

豪雨災害の被害も明らかにならない中で、カジノ法案が採決されることになる。

とりわけ、災害対応の陣頭指揮を取るべき国土交通大臣がカジノ答弁に縛り付けられることが問題視された。

野党からは「退席してもいいので災害対策してほしい」という提案がなされるほどであった。

 

それでも、政府の強い意向によりカジノ法案は成立することになる。最後まで強硬に抵抗したのは自由党の山本太郎共同代表だった。

今回のカジノ法案ではほとんどカジノのこと聞けていないんですよ。それはおまえが質問しなかったからだろうって言われるかもしれないけれども、それどころじゃないんだよってことなんです。どう考えたって優先順位は災害対応だろうって。 

山本太郎 共同代表(自由党)

7月19日 参議院内閣委員会

いずれにせよ、政府の優先順位が何なのか、この上なく明確にしたのが終盤国会であったと言えるだろう。

 

枝野幸男代表の不信任案

安倍内閣が不信任に値する理由は枚挙にいとまがありません。

 

安倍総理も、せっかく五年半も総理をやられたんですから、後の歴史に断罪されるようなことがないように、一刻も早く身を引かれることをお勧め申し上げます。

枝野幸男 代表(立憲民主党)

7月20日 衆議院本会議

国会の最終盤、話題になったのは枝野幸男代表(立憲民主党)の3時間に渡る安倍内閣不信任案に関する演説だ。

枝野氏は、災害対応、森友・加計問題など七つの論点を挙げて安倍総理が信任に値しない理由を説明した。

 

参考までに、この演説は話題を呼び、急遽解説付きで出版されている。

緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」

 

不信任案に関して、自民党議員の対応には深く失望されていた。

もし仮に、官僚システムの崩壊や様々な不祥事に対して真摯であれば、態度は違ったとしても、謙虚にその指摘に耳を傾けるだろう。

しかし、実際は、安倍内閣の閣僚のみならず、自民党議員は「聞いてなかった」「罵詈雑言」などと口々に発言するなど、真摯に指摘に耳を傾ける姿勢は皆無だった。

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国会を終えて

今国会が明らかにしたもの

ここまで第196回国会を振り返ったが、まだまだ書ききれないことがある。水道法や国際観光旅客税、経済政策、いわゆる合区の議論などについてもそうだ。

また、与野党が共に賛成した法案も多数あったが、ほとんど取り上げてこなかったことも事実だ。

 

今国会を通じて明らかになったことの一つは、安倍総理が病的な嘘的であること、そしてその嘘を、政府や党をあげて隠蔽しているということだ。

自由民主党は、党内で上がった自然な声すらも抑圧し、「実は言っていなかった」と隠蔽する組織になってしまっている。

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また、財務省という巨大官庁が機能不全に陥っていり、他省庁の文書を改ざんするほど腐敗していながら、財務大臣がそれを解決する能力も意思も持ち合わせていないことも明確になった。

文科省や厚労省もしかりである。

 

霞が関に、複数の省庁に渡って、これほど多くの問題が発生したことは、記憶の限りいなかった。

本来、この国会、あるいは次の臨時国会では、腐敗した国家システム、あるいは崩壊したガバナンスをどのように立て直すかというプランが、政府から出てきてしかるべきなのだ。

しかしながら、そのような動きは全くない。

 

今の現状は、あちこちで火事が起きながら、誰も消火しないままに総理大臣が傍観している、というような状況である。

確かに、全焼すれば火は消えるかもしれない。しかし、それは国家そのものの価値を根本的に毀損する行為に過ぎない。

嘘を突き通せば確かにその場は乗り切れるかもしれないが、そのことによって省庁のガバナンスや生産性、あるいは国家を担保している信頼性そのものが傷つけられるのだ。

 

いずれにせよ、この国会、そしてこの政府が、これまでの為政者と比べても異質であるということが、時系列を追っていくと、明らかになるのではないだろうか。

 

我々は何をなすべきか

裁量労働制のデータの誤りを指摘された法政大学の上西教授を中心に、「国会パブリックビューイング」と呼ばれるプロジェクトが立ち上がっている。

 

下記の記事もご参考に。

 

最新情報はTwitter で確認ができる。

 

国会が終わったあと、忘れてしまうことが一番の問題である。我々は覚え続けなければいけないし、語り続けなければいけない。

 

今国会の議事録は、国会会議録検索システムで把握できる。

kokkai.ndl.go.jp

 

また、過去の審議はオンラインでもご覧いただける。

衆議院インターネット審議中継

参議院インターネット審議中継

なぜ安倍総理は、不信任案に嗤(わら)うのか

枝野幸男立憲民主党代表が、戦後の歴史上最も長い内閣不信任案の趣旨説明をするなか、安倍晋三総理は、茂木敏充経産相とともに談笑していた。

 

枝野代表の決議案については、書き起こししていただいている方がいるので参照されたい。

 

さて、安倍総理は一体何を笑っていたのだろうか。

 

「罵詈雑言?」

 

自民党の議員の方々には、枝野幸男代表の演説がどうやら罵詈雑言に近い汚い言葉に聞こえたようだ。

一旦、まず安倍総理の言うことが、過去から現在に至るまで、全て正しいと仮定したとしよう。それでも、枝野代表の指摘したいくつかの点については、政府自身が認めている不祥事だったはずだ。

 

少なくとも安倍総理、ないしその関係者が問題を認めている三つの論点

森友学園問題を巡る、財務省の文書改ざん問題 

 

加計学園問題を巡る、加計学園の虚偽報告と柳瀬総理補佐官の不適切答弁問題

 

働き方改革を巡る、立法事実であるデータの不備

 

なぜ安倍総理は笑えるのか?

さて、表題に戻る。なぜ安倍総理は笑えるのだろうか?

文書改ざん問題に関しては、安倍総理自身、「膿を出しきらなければいけない」と言い、加計学園問題を巡っては加計孝太郎氏が(一応)頭を下げ、厚生労働省のデータ改ざんに関しては、厚生労働大臣が「深くお詫びする」と言った。

この三つ問題の一つ一つをとっても民主主義にとっては国家的危機と言える問題で、例えばアメリカならば特別委員会を設置するレベルの問題だ。

 

嘘をつく。改ざんする。それはまだ理解できる。

しかしながら、政府自身が認めた問題に対して、なぜ総理はこれほどニヤニヤとし、自民党議員は「罵詈雑言」と述べるのか。一体、個々の問題でお詫びしていたという事実は、彼らの頭の中ではどうなっているのだろう。

不祥事を起こした企業が記者会見で批判され、企業のCEOがニヤニヤ笑い、その取り巻きが「罵詈雑言に近い言葉を聞かせられた」などとツイートしたことがあるのだろうか?

 

総理が言っていることが真実だと仮定しても良い。仮にそうだとしても、少なくとも自分たちが認めたことに関しては、神妙に頭を下げるのが、人間の振る舞いではないだろうか。

とすると、真実は極めてシンプルではないだろうか。つまり、公文書改ざんや不適切データは、安倍総理にとって問題ではないのだ。

なぜ問題ではないのか。つまりそれは、総理が実質的な指示者となっていたからに他ならないだろう。

 

膿を出し切る、と神妙に頭を下げながら、その問題点を指摘する不信任案を嗤い、野次を飛ばし、罵詈雑言だと述べる。

まさに、溶けた国会を象徴するような、内閣不信任案だった。

失われた20年のあとの破壊された5年 - 政治家が嘘をつくことが当たり前になってはいけない

一連の事件の中で、様々に驚くことはあったが、まるでスパイ映画のように非現実的な事件を覚えているだろうか。


財務省の職員は国交省まで出向いて、わざわざ元の文章を改ざんしてさし変えようとした。しかしそれを国交省の職員は改ざんされると予知してコピーを提出していた。

にわかには信じがたい事件である。まず断言しておきたいのは、安倍政権よりも前に何の報道もなされていない時に起きたとしたら、あるいは、日本以外の先進国でこのような自体が起きたとすれば、国会あるいは世間も蜂の巣をつついたような大騒ぎになっていたはずだ、ということだ。

ウォータゲート事件も真っ青である。

 

我々は既にありえないような事態に対して、慣れきってしまっている。これは由々しき問題だ。

安倍政権の5年間の政権運営における最大の問題点は、このように、多くの人が政治の不正に対して極限まで鈍感になってしまったことではないだろうか。

 

先日、加計学園の事務局長と称する人間が、愛媛県に赴いて謝罪を行い、またメディアに対して公開で記者会見を行った。

彼らの言い分によれば、加計学園の渡辺事務局長と称する人間は「ついうっかり首相と加計理事長が出会って「獣医学部はいいね」と言ったという嘘をついてしまった」ということだ。

ついうっかり真実を言うことはあっても、ついうっかり嘘を言う、というのは、もはや虚言癖の領域である。とすると、彼が述べている話が今現在真実であるかもよくわからない。

 

もう少し近いニュースを見ていこう。河村建夫氏は「首相が『予算委員会はお手柔らかにしてほしい』『集中審議は勘弁してほしい』と発言した」と記者団に発言したものの、その後「そういった発言はなかった」と撤回した。

また、柴山総裁特別補佐は「総理答弁が決算文書の改ざんのきっかけだった」と発言し、その撤回している。

どうやら、安倍総理は嘘つきに囲まれているようだ。加計孝太郎氏も嘘をついていた。財務省も嘘をついていた。河村建夫氏も柴山昌彦氏も嘘つきだった。柳瀬氏も嘘つきだった。嘘をついていなかった正直者は総理だけらしい。

もし総裁特別補佐と総理補佐官と腹心の友が嘘つきだったとすれば、私は人間不信になると思うが、総理はたいへん強い心をお持ちのようだ。

 

問題は、総理の主張していることは、部分的には辻褄が合っていると仮定しても、全体的には全くもって支離滅裂だということだ。

 

総理は、自らのバーベキューパーティーで出会った総理秘書官と加計理事長(彼の主張によれば腹心の友である)が、官邸で会っていたことも知らなかったし、卒業式で祝辞まで乗っていたにも関わらず、腹心の友が新しい学部を設立しようとしていた、ということも知らなかったし、総理は全くプロセスに介入する権限もなく、あずかり知らぬところで進んでいたということだ。

これほど物事を把握していない上に、周りに嘘ばかりつかれている総理大臣というのは、おそらく近代国家において初めてであろう。とにかく、安倍総理は自分が無能であるということを強く主張することによってこの場を切り抜けようとしている、ということである。

 

これらはすでに100回以上語られたり、議論されていることだ。

私が書いたことはすべて陳腐だ。おそらくここまで読んでくださった方も、その印象を受けたのではないだろうか。しかし、重ねていうが、もしこれが安倍政権以前に起きていたらどうなっていただろうか。

恐ろしいほど馬鹿げていて、恐ろしいほど理解不能なことが日々起きていて、我々はそれにすっかり慣れてしまったように見える。

例えば中国のことを考えてみよう、親しい中国の方々に政治の話を聞くと、彼らのほとんどは、自国が民主主義国家でないことに対して、消極的ながら受け入れている。

なにせ十三億人もいる国だから、デモクラシーを導入するのは難しいんだ、というように。そして習近平主席(夫妻)の人気も高い。たとえ、彼が民主的に選ばれたリーダーではないとしても。

 

我々は極めて高い順応性を持っている。一度既存の枠組みができてしまうと、それを壊すの用意ではない。

もし一度、政治家が嘘をつくのが当たり前の社会ができてしまえば、我々は極めて容易くその状況に馴染んでしまう。だから私は、たとえ陳腐だとしても、このような形で文にし続ける。

 

それがいかにおかしなことであるのか、それが間違ったことなのか。そしておそらく何度も言い続けるだろう。

安倍晋三という人間は、嘘をついている。

彼は今すぐ政治家を辞め、永久に公の舞台に出るべきではない。彼の痕跡は歴史から抹消されるべきである。そのようなことを言い続ける。

 

この破壊された5年に失われた政治理念を、今すぐに回復しなくてはいけない。

なぜ高度プロフェッショナル制度は(大きな抵抗もなく)成立したのか?

 高度プロフェッショナル制度が成立した。

この間の高度プロフェッショナル制度を巡る与党の国会運営は、これまで述べてきた通り大変ひどいものだった。

 

 何より、ヒアリングについての虚偽答弁が明らかになるなど、立法事実がもはや存在しない中で、このように大きな労働法制の変化を起こしたというのは、日本の国家としての在り方に関わる異常事態と言える。

さて、今回は国会の話からは少し離れる。なぜこのような大きな法案が、世論の大きな反対もなく可決したのか、この点について検証したい。

 

高度プロフェッショナル制度へのコメント

高度プロフェッショナル制度は、どのような要請に基づき検討されてきたのだろうか。

 

経団連:記者会見における榊原会長発言要旨 (2018-05-21)

高度プロフェッショナル制度は高い専門性を有する労働者に対する制度であり、かつてのホワイトカラー・エグゼンプションとはまったく別のものである。

経団連はホワイトカラー・エグゼンプションの対象を年収400万円以上としていたが、高度プロフェッショナル制度の年収要件は1075万円とされている。まったく違う制度であり、高度プロフェッショナル制度について年収要件の引き下げを求めていく考えはない。

例えば、経団連の榊原会長はこのように述べている。また財界に大きな影響力を持つ竹中平蔵業者もこのように述べている。

 

専門職で年収の高い人を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」を「残業代ゼロ法案」と強く批判してきた連合が、条件付きで導入の容認に転じたことが組織内に波紋を広げている。

 

労働者の代表である連合の動きも決して迅速ではなかった。

連合は当初、高度プロフェッショナル制度に関して条件付きで容認しており、今回の採決の前の談話でも、高度プロフェッショナル制度よりも更に前に「同一労働同一賃金」について言及している。

 

むろん、時間外労働の規制は大変に大きな改革であり、これは歓迎すべきことだ。しかしながら、労組の強い企業では導入しづらく、また既存の正社員には適用しづらい高度プロフェッショナル制度をバーターにしたとすれば、連合の意図は透けて見える。

 

なぜ高度プロフェッショナル制度が財界にとって重要なのか

この高度プロフェッショナル制度の源流は2006年に考案された、ホワイトカラーエグゼンプションにさかのぼる。この時、年収400万円以上という大変対象範囲の広い政策として提案されたため大きな反発を生んだ。

 

つまり、高度プロフェッショナル制度とは、経団連にとって10年来の悲願であったといえる。では、なぜここまで経団連が高度プロフェッショナル制度に執着しているのか。

その理由の一つが、財界における残業代の扱いにある。財界において残業代は、諸悪の根源のように扱われている。

 

例えば、カルビーの松本会長などの発言にもその一端が見て取れる。

 日本の働き方において何が一番悪いかといえば、言うまでもなく残業ですよ。残業手当てという制度がある限り、問題は解消されません。

 働き方改革に関しては、あながち政府が言ってることも間違ってるとは思いません。裁量労働制にしたらいい。特にオフィスで働いている人たちは、「時間」ではなく「成果」で働いているのですから。

 

経団連にとって、残業代ゼロとは日本経済の最後の切り札であり、それを実現することで、本当に生産性が上がり人がより余暇を楽しめる……と考えている節すらある。

 

もちろんここには、いくつかの合理的な理由もある。

日本においてはマネジメントへの昇進を前提とした年功序列型の賃金体系が確立しており、本当の優秀なプロフェッショナルに対して適切な賃金が払われているとは言い難い。

高度プロフェッショナル制度のような別立ての賃金体系を用いることで、このような高度プロフェッショナルに高い賃金を払うことができるのも事実だ。

例えば優秀なプログラマーや研究者など、管理職ではないプレイヤーを雇用することも可能だろう。

 

しかしながら、当初経団連が400万円以上を対象にしていたことを踏まえれば、「小さく産んで大きく育てる」という経団連の目的は極めて明白ではないだろうか?

これは、労働者派遣法の歴史と重なる部分もある。

 

 

なぜ高度プロフェッショナル制度は成立したのか

では、なぜこの法案が、あえて言うならさしたる反対運動も起こらずに成立したのか。そこには深刻な世代間対立がある。

 

今の日本で、いわゆる大企業で働く20代30代などの現役世代と話していると、働かないおじさんへの憎悪といってもいいほど強い敵意がある。

いや、現役時代だけではなく、40代、50代になっても自分がバリバリ現役であると思っている人には「おっさん」批判をし続ける人は少なくない。

リベラルとか保守とか、思想に関係なく、とにかく彼らは働かない上の世代、いわゆる老害を強く憎んでいて、老害を追放すれば日本は良くなるとかなりピュアに信じている。

 

今の日本に共通するのは、稼がない、成果を出さないものは価値がない、という強い価値観である。

そう考えれば、今回の高度プロフェッショナル制度が、強い反対運動につながらなかったことも理解できるのではないだろうか。

経営者だけではない。残業代がなくなることは適切だとすら考えている労働者も多いのだ。

 

戦後、焼け野原からスタートした日本のアイデンティティは、高度経済成長以降一貫して「経済大国」であった。

バブル崩壊以降の長期低迷により、日本は経済大国としてのアイデンティティを喪失し、その隙間を縫って、昭和日本の否定が行われた。かつて世界から称賛されたはずの日本的経営、とりわけ年功序列、終身雇用は、とりわけ諸悪の根源として徹底して糾弾され続けた。

 

改革という言葉が横行した結果、非正規社員は急増し、一方で労働組合は正規社員の待遇を守ることに固執した結果、格差は拡大し、正規社員の持つ様々な労働者としての権利は既得権益とすら見なされるようになった。

バブル崩壊以降の日本は、奇妙なことに、昭和の日本を否定し続けることで、失ったはずの経済大国としてのアイデンティティを保ってきたのだ。

 

そこで生まれたのが、「稼がないものには価値がない」という価値観である。

働かないで残業代を稼いでいるやつがいたから、日本の改革は進まない。こういった空気は確実に今の日本の主流と言ってもいい。

極めて不幸なことに、そのような思考の人間ほど真面目に働くため、過労死のリスクが高い。

 

過去の日本の否定と、経済大国というすでに喪失したアイデンティティの間で、立法事実のないはずの高度プロフェッショナル制度は成立した。

そしてその先に待っているのは、戦後を否定しながら、失われし「経済大国」を引きずり続ける、悲しいノスタルジー国家ではないのだろうか。

「政府から目をそらす」という政治姿勢が日本の政治を劣化させる

以前「野党を批判するのは簡単だが、それよりも重要なことが起こっているのではないか?」という趣旨の記事を上げたところ、多くのコメントを頂いた。

ここに集まったコメントを

批判について

批判されたコメントの一部をご紹介したい。

野党を支持しろ?

「自分の頭で考えて野党支持者になれ」と言われても「民主主義ではよりマシな方を選択するしかない」と返事するのみ。野党批判=よりマシな方になれって構図が分からないのかなぁ。

有権者のことを見くびり過ぎなのでは。それぞれの価値観で与野党比較した上で投票しているでしょう。あなたは「野党に投票すべき」という価値観を持っているだけで。  

まず申し上げておきたいのだけど、別に私は野党に投票すべきとも野党支持者になれとも言っていない。

私は単に、「公文書の改ざんって先進国家としてありえないよね?」「データが間違っていたのに法案を通すってありえないよね?」ということと、「別にそれって野党を批判しても解決しないよね?」ということを書いているだけだ。

タイトルにも書いてあるとおり「野党を批判している間にこの国でとんでもないことが起きている」というのが投稿の趣旨だ。

なのに、なぜか「なぜ野党が支持されないのか」を延々とコメントしていただく方が多いのは不思議な事だ。

これだから左翼は?

最近の左翼のトレンド。自称中立や右左に偏ってない人を叩く。逆になんで左の思想なら全部正解で、右なら間違いとかいう0か100の思考が正しいと思ってるんだ?それぞれ、正しい時、間違ってる時があるの当たり前だろ

 左翼って多様性を認めっていうけど全部但し書き付きだよね「俺の思う多様性」。

しつこいようだが、私はただ「公文書の改ざんやデータがないままの立法はとんでもないことだ」と言っているだけだ。

公文書の改ざんを批判したら左翼になるなら、右翼は公文書を書き換えてもいいという思想なのだろうか、実に不思議である。

 

政府から目をそらし続けることについて

ところで、私はこれらの批判コメントを見ていて不思議に思ったことがある。誰も政府について言及していない。

政府支持の言論人の中には、「高度プロフェッショナル制度に賛成だ」とか「公文書の改ざんは財務省の問題だから政府の責任ではない」というような意見を堂々と言う方もいる。

コメントの多くはそうではない。

 

 

「公文書の改ざんやデータの書き換えは問題だ、野党の批判は簡単だが、そんなことをしている間に大変なことが起きているのではないか」

という批判に対して、

「左翼は〰」「野党を支持しろと言うけど〰」

という野党批判を繰り返しているだけだ。

 

先のエントリに対して、ありうる反論は下記の三つしかない。

  1. 「公文書の改ざんやデータの書き換えは大きな問題ではない。また高度プロフェッショナル制度にも賛成だ。だから政府を支持する」
  2. 「公文書の改ざんやデータの書き換えは問題だが、それは支持不支持を変えるほど大きな問題ではない」
  3. 「野党の批判は、政府批判よりも大事である」

実質的に、野党批判は二番に含まれるのかもしれない。

 

野党はこれくらいひどい。野党はこんなにもダメだ。そう何度も何度も繰り返せば、「やはり野党に投票したら日本はダメになる」と安心して、例えば高度プロフェッショナル制度や共謀罪、水道法に対して反対であったとしても、その個別の政策の賛否から目をそらすことが出来る。

そして、返す刀で「高度プロフェッショナル制度を可決させてしまう野党はだらしがない」「佐川氏から証拠を引き出せない野党は情けない」と野党批判をすることも出来る。一石二鳥だ。

つまり、政府から目をそらし、ただ野党の行動だけに焦点を当てることで、個別の政策の賛否を明らかにすることなく(あるいは個別政策に対して否定的であったとしても)、政府を支持し続けることが出来る。

 

別に自民党支持であれば自民党や政権を批判してはいけないわけではない。

私は、まっとうな自民党の支持者であればこそ、「公文書の改ざんは大変問題だ。改善策をきちんと考える必要がある」と、投票行動と切り離して批判するべきなのではないかと考えている。

「野党に政権を任せる訳にはいかない。しかし、今回の問題は由々しき問題でしっかりと解決すべきだ」という反応があってもいいはずなのだ。

 

残念ながら、このような支持層の姿勢こそが、安倍政権を根っこから腐らせてしまった最大の原因である、と考えざるを得ない。

Airbnb キャンセルを巡る議論 ー 日本の民泊に関する規制(民泊新法)は厳しいのか?

論点1 - 規制は厳しいのか

諸外国の規制を見る

(参考1)諸外国における規制等の事例について(国土交通省)

(参考2)各国の民泊の現状

 

例えば、ニューヨークの場合下記のようになる。見て分かる通り、結構厳しい。

宿泊業(ホテル等)を営む場合の規制等

  • 宿泊業を開始するに当たっては、市の登録を受ける必要がある。また、建設に当たっては、州、市当局から各種許認可、検査を受ける必要がある。
  • ホテルについて、構造に関して、居住、宿泊の部屋を仕切る壁に関する規定が、防火 に関して、出入口・警報器等の掲示や検知器、警報器等の設備に関する規定がそれぞ れ一般住宅の規定に加えて規定されている。
  • ニューヨーク市でホテルの建設が認められるのは、商業地域の大部分、工業地域の 一部のほか、住居地域で市の許可を得て認められるケースもある

民泊に関連した貸主に対する規制等

  • 2010年に州法が改正され、居住を目的とした共同住宅(クラスA)では、連続30日以上の居住が求められることとなり、3戸以上の共同住宅では居住者が不在の場合に、30日未満の短期滞在は違法となった。
  • 上記の共同住宅以外の建築物であっても、市条例により、許可なしに使用用途の変 更はできず、短期滞在は違法となる。 

要は、共同住宅では短期滞在が不可能、という形だ。

この他にも、

・90日以上貸し出す場合は転用許可が必要(ロンドン)

・貸出が年間60日まで(オランダ・アムステルダム)

・8ヶ月以上の居住実績が必要(フランス・パリ)

など、要は「住んでいない物件を借りて、Airbnb専用にするのはダメだけど、部屋が余っているなら時々貸し出してもいいよ」というような法体系になっているところが多い。

そもそもAirbnbって、そういうサービスだったのではないだろうか。適当にアパートを借りてAirbnb専用物件にする、というのはサービスの趣旨から外れているような気がする。

 

改正旅館業法・民泊新法に関する国会質疑を見る

民泊については、主に平成29年06月07日の衆議院厚生労働委員会で議論されていた。 

一つは、今、現に旅館業やホテル業をされている方々、こういう方々から見れば、特に、今回、民泊では、不在型と言われる、家主がいない、こういう民泊については、ビジネスじゃないか、同じように仕事をビジネスとしてやるのに、片や規制が緩くて、片や許可をとって厳しい規制になっている、不公平じゃないか、同じような規制にすべきじゃないか、こういうアプローチがある(後略)

 

今、民泊をされている、家主が居住型で一緒にいて、そこに泊めている、こういう方々からすれば、家主がいないところ、本当に単に貸しているところとは、例えば、現に今、我々は住んでいるわけですから、そこで生活をしているわけですから、安全の基準やさまざまな衛生基準というのは同じじゃ困る、今、我々の生活は現にできているんだ、こういう観点、この二つのアプローチがあって、この中でどういう規制をつくっていくかというのが大事だというふうに思っています。

 

伊佐進一衆院議員(公明党) 
 私ごとなんですけれども、私、今、議員宿舎に住んでおりませんで、議員宿舎より安い、本当の一部屋のワンルームマンションに住んでいるんです。一年ぐらい前からですか、両隣が多分、民泊になっているんです、私の部屋の両隣が。それで、やはりうるさいんですよね、夜な夜な。多分、民泊なんですよ、いろいろな国の人が入れかわり立ちかわり入っていますので。


 通報というお話がありました。私も、たまたまこういう制度とか世の中の動きに関心があって、私、民泊自体は決して否定的な立場ではないので、いい民泊、いい制度はどんどん広まってもいいと思っている側なんですが、ただ、違法民泊、あと、いろいろこれまで審議会とか国土交通委員会でも議論になった、やはり住宅地でこういう旅館的営業をやることの是非というのは、今もずっと議論として残っていると思うんですね。


 通報と言われたときに、私も別に通報はしたことはないですし、違法か合法かすら、両隣、どういう運営形態か全くわからないです。もし仮に違法だとわかっても、それは私は、こういう仕事で、正義感を持って通報するでしょうけれども、普通は通報しにくいだろうなと思うんですよ。

 

井坂信彦衆院議員(民進党)

このような声がある一方。この日は、民泊について話し合われると同時に、既存の旅館に対しての規制が過度に厳しいのではないかという議論もあった。

 当然、ダブルスタンダードになってはいけない。別に、民泊だから汚くていいとか、民泊だからこういう衛生回りを手を抜いていいということでは全くないというふうに思います。
 ただ一方で、今旅館、ホテルに課される衛生基準というのは、私もこの細かい、旅館業における衛生等管理要領というのをずっと隅々まで見せていただきましたけれども、もう大変細かいことまで規定をされております。これが本当に果たして旅館、ホテルを営むために必要な最低基準の衛生基準と言えるかどうか、私は大変疑問に思いますし、これをまた今から民泊に全部課すとなったら民泊は成り立たないですから、民泊はやはりもっと緩いものにせざるを得ないというふうに思うんですね。


 そうなってくると、私、大変疑問に思いますのは、では、これまでこれだけ細かく定めて守らせていた衛生基準というのは本当に必要な衛生基準だったのかという議論に当然なってくると思うんですよ。 

井坂信彦 衆院議員(民進党)

 せっかくこの旅館業法を改正して、罰則をつくって、無許可営業については立入検査ができるようにするわけですから、今現在あるほぼ旅館業と言えるような形態でやっている賃貸マンションとか、そういう今回の、先ほどの簡易宿所みたいなものについては、きちんと立ち入りして、実態をきちんと見て、やはり許可をとらせるべきものはとらせる(べき)

初鹿明博 衆院議員(民進党)

 防犯上の理由から、深夜に女性を一人で働かせることは避けるべきではないかというふうに思います。また、フロント勤務は、一人でやると、夜は、仮眠も休憩も十分にとれない、昼も、いつ来るかわからない来客や電話に対応するために昼食をとる暇もない、非常に過酷な勤務条件にある、労働条件にあるということが言われています。
 ホテル、旅館業界では、これまでも残業代の未払い訴訟というのも多く起きておりますし、今後、働き方改革、長時間労働規制を進めていく上で、土日とか休みも関係なく、二十四時間の対応が求められるホテル業界の特性に対応した対策というのが必要ではないかというふうに思います

大西健介 衆院議員(民進党) 

論点2 - 観光庁の通達は適切か?

 ニューヨークにおけるAirbnbの収益の3分の2は、何らかの法律に違反した取引である、と書かれている。

先の国交省の調査にも、ニューヨークについてこう記載されている。

2014年10 月、州の実態調査により、Airbnb に登録されている物件の 72%が違法なものであることが判明。取締強化の方針が打ち出された。

様々な経緯を踏まえると、Airbnb側の法規範の甘さが今回の対応を招いたのではないかという疑念は拭えない。

違法物件に対して売上を下げてでも対処する、というような積極的な対応を取っていないのではないか、という批判は当然あるだろう。

とはいえ、Airbnb側のリリースにあるように、観光庁との事前のすり合わせでは合意できていて、突然ちゃぶ台をひっくり返されたのかもしれないし、ここの実態はわからないが。 

まとめ

今回の民泊新法は、諸外国を鑑みても比較的軽度な規制といえる。

そのうえで、既存の旅館業法が古くなっていることは大西議員の指摘などにもあるので、既存の宿泊施設に対する不要な規制を取り払いつつ、一部地域を国家戦略特区などで規制緩和するというのはそれほど悪いプラントは思えない。

ニューヨークやサンフランシスコなど、あまりに民泊需要が高まったことで住宅事情が悪化した例も多い。

シェアリングエコノミーは決して悪ではないが、本来想定された運用である、「余った部屋を貸す」というような運用は、おそらく日本では難しいだろうし(部屋が余るケースがイメージできない)、そうなれば、当然部屋ごと貸すという形になる(不在型)。そうすると、当然ゲストの騒音なども管理するものがいなくなるわけで、隣人トラブルに発展することは必然だ。

当然、このような現状を考えれば、部屋貸しとは違う規制が必要になるし、管理者を明記することなどは必要なのではないか。

 

総じて考えれば、「これくらいの規制がクリアできないような物件なら、やはりリスティングすべきではないのではないか?」と思う。

労働者派遣法の歴史から学ぶ、高度プロフェッショナル制度の行く末

労働者派遣法の歴史

【労働者派遣法に関連する規制の変遷ポイント】

<時系列>
・1985年(昭和60年)労働者派遣法制定
・1986年(昭和61年)労働者派遣法施行
・1986年(昭和61年)労働者派遣事業と請負の区分に関する告示
・1996年(平成8年)改正労働者派遣法施行
・1999年(平成11年)改正労働者派遣法施行
・1999年(平成11年)派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針
・1999年(平成11年)派遣先が講ずべき措置に関する指針
・2000年(平成12年)紹介予定派遣の許容
・2004年(平成16年)改正労働者派遣法施行
・2006年(平成18年)偽装請負に関する通達
・2007年(平成19年)改正労働者派遣法施行
・2007年(平成19年)請負ガイドライン
・2008年(平成20年)日雇派遣に関する省令、指針
・2009年(平成21年)派遣元・派遣先指針の改正
・2009年(平成21年)一般労働者派遣事業の許可基準の見直し
・2009年(平成21年)労働者派遣事業と請負の区分に関する疑義応答集
・2010年(平成22年)政令26業務に関する指導監督指示
・2012年(平成24年)改正労働者派遣法施行
・2012年(平成24年)請負に関する告示
・2013年(平成25年)労働者派遣事業と請負の区分に関する疑義応答集(第2集)
・2015年(平成27年)改正労働者派遣法施行
・2015年(平成27年)労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律(同一労働同一賃金推進法)成立
・2015年(平成27年)労働契約申込みみなし制度開始

 

(参考)http://www.bizlaw.jp/businessissues_koyou_03_01/

国会で労働者派遣法はどのように語られてきたか

労働者派遣法制定まで

 本法案は、幾千万の我が国労働者の基本的人権や労働条件にかかわる重大な法案であります。それは、戦後営々として労働者が築き上げてきた民主的労働法制を根底からゆがめ、資本の飽くなき合理化と利潤追求の前に無権利状態の労働者を大量につくり出すものであります。

これが全労働者の労働条件の劣悪化を招くことは必至であります。

ところが、これほど重要な法案であるにもかかわらず、我が党の本会議趣旨説明要求を封殺した上、本院社会労働委員会における審議時間はわずか十三時間、まだまだ重要問題が解明されていないにもかかわらず、我が党以外の合意で審議が打ち切られたことは、国権の最高機関である国会の責任をみずから放棄するものであり、怒りを禁じることができません。私は、まずこの点について厳しく指摘するものであります。

 

昭和60年06月07日参議院本会議

日本共産党 安武洋子議員

これは、高度プロフェッショナル制度への反対討論ではない。の、労働者派遣法への反対討論である。当時、共産党以外の野党は一定程度この法案に対して理解を示していた。

 対象業務は、当初の四業種から十四業務に増加しておりますけれども、本法案では、特に限定する規定はなく、今後、政府の定める政令によって広く対象業務とされる可能性が残されているのであります。対象業務は法律上明確にし、最小限に限定すべきであります。我が党は、技術革新に対応するソフトウェア業務に限定すべきことを提案してきたところであります。

 

昭和60年06月07日参議院本会議

日本社会党 高杉廸忠議員

労働組合の中では、 労働者派遣法に対して好意的な意見が多かった。これは、すでに法案成立前に「偽装請負」という形で、労働者派遣事業が存在したことに起因する。

つまり、労働者派遣法は、少なくとも労使合意の上で、労働者保護のための法律として始まった。

また、この時は、13業種のみの解禁であり、ネガティブリスト(特定の業種のみの解禁)だった。

しかし、共産党などを含め、すでにこのときから懸念する声はあったようだ。

 それから労働組合の問題でございますが、我々労働者派遣法案というものを長い間ぜひ成立をさせてほしいということでやってまいりました。ただ、労働組合間の中で、労働者派遣法案につきましては反対する労働組合もございます。

 

昭和60年02月27日 参議院 国民生活・経済に関する調査特別委員会

全日本電機機器労働組合連合会(電機労連)政策企画局長 阿島征夫氏

 私たちの法律事務所には数十人の法律家がおります。たくさんの派遣労働者の諸君が相談に来られます。その中で私たちが知ったことは、派遣労働者の身分が極めて不安定であり、いつやめさせられるかわからない。中間搾取がひどく、賃金が安過ぎる。コンピューター関係などでは特に超過密労働になっており、一番極端な場合には月間三百三十四時間という残業、百時間を超える者はざらだという状態になっている。

 

このままだと三十代半ばでスクラップ化するんじゃないかという危険を彼らは訴えているわけです。もし労働者派遣法がその目的のとおり派遣労働者を保護するというのならば、こういう実態を私は抜本的に解決するものでなければならないんじゃないかというふうに思うわけです。

 

昭和60年05月29日 衆議院 社会労働委員会

参考人 坂本修弁護士

対象業務の拡大(平成八年)、原則自由化(平成十一年)

それ以降、労働者派遣は、順次拡大されていく。

八五年に政府は、この労働者供給事業を一部合法化するということで、労働者派遣事業を制度化してしまったわけです。いわば違法状態を放置してそれを追認する、こういうのが当時の労働立法の態度であったというふうに思います。

 

 労働基準監督、派遣労働者を特別に対象にした労働基準監督が行われたという報告を私は知りません。労働基準監督官の知り合いの人に聞きますと、もし派遣労働者について監督をすれば労働基準法違反がもう山のように出てくる、そうすると通常の監督業務ができない、だからいわば手を触れないでおくんだというふうなことを聞いているわけです。

 

平成11年05月11日 衆議院労働委員会

脇田滋参考人(龍谷大学法学部教授) 

しかし、連合の動きは必ずしも明確ではなく、派遣労働者の労組加入が少ないことからも、結果的には政府を追認する形になっていった。 

 結論といたしましては、そうしたいろいろのニーズにこたえる必要はあるけれども、今回の改正問題につきましては最低限の基準を決めるということで、労使の力関係が現在明らかに大きな差がある以上は、弱い立場の労働者保護という政策の視点でこれを制定しなければならないということを考えているということであります。

 

平成11年05月11日 衆議院労働委員会

松浦清春参考人(連合 総合労働局長) 

 

また、当時は「派遣」や「非正規」などに対して、現在ほどネガティブなイメージがなかったほか、失業率の上昇などの地合いも重なり、今ほど大規模な反対運動がなかったようだ。


 三月の失業率が御存じのように四・八%となりまして、過去最高を更新しておりますが、私は、我が国がこのまま高失業社会に向かうことは、経済的にも、また社会的にも、将来大きなコストを負担することにつながることになると考えておりますし、これを回避するために労働力需給調整機能の早急な整備が不可欠であると考えております。

平成11年05月11日 衆議院労働委員会

 柳本卓治衆院議員(自由民主党)

日雇い派遣の禁止など事業規制の強化(平成24年)・派遣事業は許可制に、原則上限三年へ(平成27年)

その後、非正規の増加などに従って、民主党政権・自民党政権の元で一定の規制が強化され、いわゆる三年ルールなどが設定された。

三年ルールが想定通り正規への転換になりうるか注目されたものの、雇い止めなどが大規模に起こるなど社会問題化している。

 

派遣法から考える高度プロフェッショナル制度

労働者派遣法は、当初すでに横行していた人貸しビジネスの労働者保護という名目で始まった。

それは、終身雇用の崩壊などでより流動的な雇用を求める経済界の要求、自由を求めた労働者の幻想、派遣労働者を軽視した労働界の弱腰によるものだ。

また、その規制は小泉政権下などで段階的に緩和され、非正規率の上昇と雇用の不安定化をもたらした。

 

高度プロフェッショナル制度は、すでに産業界から緩和が求められており、段階的に今後年収要件などの緩和の声が上がるのは間違いないだろう。

一つわかることがある。一度作られた法案というものは、いずれにせよ、取り消すことが極めて難しいということだ。

 

賽は投げられた。賽が地面に落ちてしまうかどうか、国会は今そのような瀬戸際にあるということを理解していただきたい。