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虚構の内閣

「オズの魔法使い」の最後。スクリーンが倒れると、偉大なる魔道士であったはずのオズの魔法使いはオマハから来た、ただの詐欺師だったことがわかる。

 この2ヶ月ほどで、安倍政権のスクリーンもまた、倒れた。

 

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並べ立ててみればわかる。捏造と隠蔽と改ざんと口利きのフルセットだ。つまり、これは、第二次安倍晋三政権が、いかに国民を騙してきたかということの証拠である。

「一強多弱」「安定政権」と呼ばれた安倍政権は、それまで盤石であるように見えた。不思議なほど、決定的なスキャンダルはなく(まあ、決定的であると評価する人もいるだろうが)、安保法案を通しても、消費税を延期せずとも、解散の理由が特に無くとも、魔法のごとく、その支持率を保っていた。

 

 しかし、魔法はなかった。結局のところ、安倍政権は、嘘とごまかしによってその権力基盤を保っているだけだった。

 首相の魔法がスキャンダルを抑えていたのではなく、単にこれまでの内閣がやらないような捏造と隠蔽によって野党の攻撃を交わしていただけだった。

 ランス・アームストロングが不屈の精神力でカムバックし優勝をもぎ取ったのではなく、単なるドーパーだったのと同じように。

 

「安倍外交」は、結局のところ何も機能していなかった。

約束したはずの物価上昇率2%は未だに達成されないままだ。

魔法は、とけたのだ。

 

山本七平はこのように言っている。

「陸軍の能力はこれだけです。能力以上のことはできません」と国民の前に端的率直に言っておけば何でもないことを、自らデッチあげた「無敵」という虚構に足をとられ、それに自分のが振り回され、その虚構が現実であるかの如く振舞わねばならなくなり、虚構を虚構だと指摘されそうになれば、ただただ興奮して居丈高にその相手をきめつけ、狂ったように「無敵」を演じつづけ、そのため「神風」に象徴される万一の僥倖を空だのみして無辜の民の血を流しつづけた、その人たちの頭の中にあったものこそ血ぬられた「絵そらごと」でなくて、何であろう。妄想ではないか。  

一下級将校の見た帝国陸軍 (文春文庫)

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 未だに安倍政権の存続を願う人の心理は私には理解できる。それは、終戦間際になっても本土決戦を心に誓っていた人たちと似ているのではないか。

 自ら信じていたことの全てが虚構であったという現実に耐えられる人は、そう多くはないだろう。

 

 私は非常に虚しい気持ちだ。どのような政権であれ、国民からの信任を受けて政策を遂行している限り、それは尊重されるべきだ。

 しかし、その信任そのものが、虚構によって演出されたものであった、ということは、この数年間の政治的な意味での前進は、ゼロに等しいということになる。

 結局のところ、戦後、都合の悪い書類を焼き捨てた国家から、我々は一つも前進していなかったということだろうか。いや、少なくとも、我々は焼き捨ててはいない。メモを書き残していた人たちはいたのだ。内閣がそれを隠していたと言うだけで。それは最後の希望なのかもしれない。

 

 

 安倍政権のかけた魔法がとけた後、誰が総理大臣になるにしてもその道は困難なものになるだろう。安定政権を望むことは難しい。

 いずれにせよ、安倍政権がたかだか数年延命する、ということに対して払った対価は、あまりに大きい。それは、この国の未来と信頼そのものだった。

 

 彼らは、正しい意味で国を売ったのである。