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三浦×久保戦の△6七歩成は、なぜ「人間ではありえない手」ではないか

R2000〜2100というのは、アマチュア四段。24、クエスト、ウォーズ、だいたい同じくらい。R2700でアマチュアのタイトルホルダークラス。プロの平均が3000前後だろうか。

上位3〜5%くらいだと思う、多分。もちろん元奨とかになるともっと強い。

 

前回は渡辺×三浦戦の感想を述べたが、先のブログで言及頂いたので久保×三浦の一局の感想を書こうと思う。

openblog.seesaa.net

 

この一極に関して言えば「ソフト感」はない。

渡辺×三浦戦や竜王戦挑戦者決定戦の3局目とは明らかに異質。

 

久保×三浦戦は「ソフト指し」ではない

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 さて、久保×三浦戦である。△6七歩成。この踏み込みが好守で、後手の三浦九段が勝ちになっている。

先程のブログではこう書かれている。

ところがこの状態で、「△6七歩成」を選択した。こういうことは、人間では、まずありえない。あるとしたら、ずっと先まで見通している場合だけだ。ずっと先の分岐まですべて読み切っているのでなければ、人間ならば開戦には踏み切るまい。 

これだけ読むと、人智の及ばない手を三浦九段が指したようにみえる。

 

ところが、竜王戦の中継ブログにはこうある。

kifulog.shogi.or.jp

 

△4二歩▲5三金の交換が入れば、そこで△6七歩成は有力です。そうなればどちらかが倒れるまでの、激しいたたき合いになる可能性があります。

すでに人間である検討陣が指摘している。(「検討陣がソフトを使ったからだ!」という主張もあるかもしれないが)

要するに、普通に人間が第一に検討する順なのだ。実際にそう進んだ。

 

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歩を成れば、この局面までは必ず進む。意外とこの局面で有効な手が先手になかった。

棋譜コメントによると、村中六段は▲5五角を検討していた。そう進むと、最終の△2三金がものすごく詰みづらい形になっている。

 

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仮にこう進むと、なんとなく「先手が攻めづらそう」というのは級位者の方でもイメージが付くのではないだろうか。詰めろのかかりづらい形だ。

ここで、「△6七歩成」という手を思い浮かべること自体は、人間でも容易だ。しかし、この時点で最後の詰みまで、すべての分岐を読み切るということは、コンピュータ以外ではまずできまい。

先程のブログにはこうあるが、もちろん全てを詰みまで読み切っているわけではないだろう。

ただ、この形まで見えると、△6七歩成は相当有力であることがわかる。先手は△2五金の一発で受けが効かなくなるし、意外と上部が広い。更に、銀や角を渡せば久保九段の玉はすぐに詰む。

こういう、「詰みづらそうだから踏み込もう」というような「パターン認識」は人間の最も得意とするところである。

 

ということで久保九段は先に▲3二飛を決め、飛車を引いて粘る順に出たが、これはおそらく予定変更ということだろう。

本局を見ると、△6七歩成よりも前に、△4二歩といったん銀に当ててでも金を追い払ったのが好守だったと思う。

最終盤の詰みは見事だが、三浦九段はそもそも詰将棋の名手である。結婚式で詰将棋をやってドン引きされた男だ。そりゃこれくらい詰ますだろう(多分)

 

久保×三浦戦は「ソフト指し」ではない

(真相はわからないが)この一局に関して言えば、三浦九段はずっと劣勢で、久保九段の▲6七歩が悪手で逆転した、とても人間的な一局であるように見える。

羽生さんだって一手詰めを見逃したことがある。人間の対局は間違えるから面白いのだ。

一貫して先手優勢だった三浦×渡辺戦とは明らかに違う。

まあ。少なくとも△6七歩成が「ソフトでなければ指せない手」ではないことは確かだ。(検討陣が指摘していた順なのだから)

ソフトが強くなってきたことは事実だが、いたずらに棋士を貶めるために「こんな手は人間はさせないだろ、うらうら」というのはあまりにリスペクトを欠いているのではないだろうか。

人間もそう捨てたものではない。一生にそれを賭けてきた男たちなのだから。